増補新版 情報幾何学の新展開

SGCライブラリ

近年,特に大学理工系の大学院の充実はめざましいものがあります.しかしながら学部上級課程や大学院課程の学術的なテキスト・参考書はきわめて少ないのが現状です.
本ライブラリは,これらの状況を踏まえて,数理科学諸分野および関連する領域から現代的なテーマやトピックスを順次とりあげ,時代の要請に応える魅力的なライブラリを構築しようとするものです.

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SGCライブラリ  203

増補新版 情報幾何学の新展開

定価:
2,970
(本体:2,700円+税)
難易度:中級

発行日:2025年9月25日

発行:サイエンス社

ISBN:978-4-7819-1648-4

サイズ:並製B5

ページ数:248ページ

在庫:在庫あり

内容詳細

情報幾何学は,確率分布のなす空間の幾何学として古くから研究され,機械学習や深層学習など,現代の情報科学に広く応用されてきた.初版刊行以来,多くの読者に読み継がれて11年を経た今回の改訂では,Wasserstein幾何の応用の広がりと,それに関連した情報幾何の理論についての一章を設け,さらに充実した内容となっている.情報幾何学の理論を発展させてきた創始者自らによる解説の決定版.

目次

第I部 多様体とダイバージェンス関数
第1章 多様体とダイバージェンス関数
  1.1 工学に現れる空間:多様体
  1.2 多様体上のダイバージェンス関数
第2章 凸関数の導くダイバージェンスと双対平坦構造
  2.1 凸関数とダイバージェンス
  2.2 Legendre変換と双対性
  2.3 ダイバージェンスとリーマン幾何:接空間
  2.4 凸関数と双対平坦多様体
  2.5 拡張ピタゴラスの定理
  2.6 拡張双対射影定理
第3章 指数型分布族の双対平坦構造
  3.1 指数型分布族
  3.2 指数型分布族の凸関数と双対平坦構造
  3.3 e-平坦とm-平坦
  3.4 指数型分布族,凸関数,Bregmanダイバージェンス
  3.5 指数型分布族の拡大
  3.6 射影定理とピタゴラスの定理の応用
第4章 確率分布族における不変なダイバージェンス
  4.1 不変性
  4.2 粗視化と単調性
  4.3 標準f関数とFisher情報行列
  4.4 いろいろなfダイバージェンス
  4.5 正測度空間におけるfダイバージェンス
  4.6 確率分布空間における不変で双対平坦なダイバージェンス:KLダイバージェンスとαダイバージェンス
  4.7 正測度空間で双対平坦性を与えるfダイバージェンス
  4.8 KLダイバージェンスの性質
第5章 確率分布族,正測度族,正定値行列空間に導入する非不変な双対平坦構造
  5.1 正測度空間における(u,v)ダイバージェンス
  5.2 正定値行列空間の不変なダイバージェンス
  5.3 q自由エネルギーが導く確率分布族空間の双対平坦構造

第II部 微分幾何学入門
第6章 アファイン接続,共変微分,測地線
  6.1 接空間と計量
  6.2 座標変換とテンソル
  6.3 アファイン接続
  6.4 共変微分
  6.5 ベクトルの平行移動
  6.6 測地線
  6.7 リーマン接続
第7章 曲率と捩率
  7.1 リーマン曲率とベクトルの世界一周
  7.2 捩率と世界一周
  7.3 部分空間の埋込曲率
第8章 双対接続の幾何
  8.1 双対接続の導入
  8.2 双対平坦なリーマン空間
  8.3 α接続とα幾何学
  8.4 双対平坦空間のポテンシャル関数と規範ダイバージェンス
  8.5 ダイバージェンスと双対幾何
第9章 階層構造を持つ双対平坦空間
  9.1 階層双対平坦空間
  9.2 混合座標系と直交葉層化
  9.3 神経スパイクの情報幾何
  9.4 高次相関は情報を担うか
  9.5 産業連関表の情報幾何

第III部 統計的推論の情報幾何
第10 章統計的推論と情報幾何:曲指数型分布族を用いて
  10.1 統計推論の幾何学的な枠組み ― 例題を用いた直観的説明
  10.2 Fisher情報量とCrámer-Raoの定理
  10.3 指数型分布族における統計的推論
  10.4 曲指数型分布族における推論
  10.5 統計的推定の漸近理論
  10.6 指数型分布族における検定と分類
  10.7 検定の漸近理論
第11章 Neyman-Scott問題:局外母数とセミパラメトリック統計モデル
  11.1 局外母数を含む統計モデル
  11.2 Neyman-Scott問題
  11.3 セミパラメトリック統計モデルと推定関数
  11.4 推定関数の情報幾何
  11.5 Neyman-Scott問題の解
  11.6 線形関係の推定:その解
  11.7 秤の問題の解
  11.8 神経スパイクの解
第12章 隠れ変数のあるモデル:emとEMアルゴリズム,非忠実なモデル,Bayes統計
  12.1 隠れ変数のある統計モデル
  12.2 emアルゴリズム
  12.3 EMアルゴリズム
  12.4 非忠実なモデルによる推論
  12.5 変分Bayes法
  12.6 Bayes統計の情報幾何 ― 深層学習に向けて

第IV部 情報幾何の様々な応用
第13章 機械学習の情報幾何
  13.1 画像の分類,検索,認識:クラスタリングの情報幾何
  13.2 サポートベクトル機械
  13.3 確率推論,グラフィカルモデル,信念伝播法
第14章 学習の力学と特異点:多層パーセプトロンと自然勾配学習法
  14.1 学習機械:多層パーセプトロン ― その栄枯盛衰
  14.2 多層パーセプトロンの空間の特異構造
  14.3 確率的勾配降下法と自然勾配学習法
  14.4 多層パーセプトロンの学習力学
  14.5 Bayes推論と特異点:代数幾何による解析
第15章 深層学習の発展と統計神経力学
  15.1 ランダム結合の深層回路
  15.2 学習とカーネル
  15.3 接神経核理論
  15.4 深層学習にかかわる驚異の発見
  15.5 ランダム回路網の信号伝播
  15.6 Fisher情報量
  15.7 Fisher情報行列の固有値の分布
第16章 Wasserstein情報幾何
  16.1 Wasserstein距離
  16.2 エントロピー制約を付けたWasserstein距離
  16.3 最適輸送計画の多様体
  16.4 エントロピー制約が与えるダイバージェンス
  16.5 パターンの集まりの中心:形と位置の分離定理
第17章 Wasserstein情報幾何の応用
  17.1 Wasserstein距離の動的表現
  17.2 確率分布空間上のWasserstein幾何
  17.3 Wasserstein幾何と深層学習
第18章 信号処理と最適化の情報幾何
  18.1 主成分分析
  18.2 独立成分分析
  18.3 非負行列分解
  18.4 スパース解と圧縮測定
  18.5 凸計画法の情報幾何

あとがき
索引

サポート情報

次号の予告

一歩踏み込む 素粒子物理学

弦理論と弦の場
本書では,量子力学と場の量子論の基本的な知識を前提としつつ,弦理論の基礎を比較的少ない頁数で,しかしできる限り正確に理解できるように解説する.学部・大学院で学ぶ様々な理論や数学が弦理論の中でどのように生きているのかを実感し,それらの知識が互いに結びついて弦理論という大きな構造を形作っていることを理解することを目指す.

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