創発するブラックホール

SGCライブラリ

近年,特に大学理工系の大学院の充実はめざましいものがあります.しかしながら学部上級課程や大学院課程の学術的なテキスト・参考書はきわめて少ないのが現状です.
本ライブラリは,これらの状況を踏まえて,数理科学諸分野および関連する領域から現代的なテーマやトピックスを順次とりあげ,時代の要請に応える魅力的なライブラリを構築しようとするものです.

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SGCライブラリ  205

創発するブラックホール

量子情報理論とAdS/CFT対応からのアプローチ
定価:
3,245
(本体:2,950円+税)
難易度:上級

発行日:2025年12月25日

発行:サイエンス社

ISBN:978-4-7819-1655-2

サイズ:並製B5

ページ数:224ページ

在庫:在庫あり

内容詳細

本書では,量子情報理論とホログラフィー原理を手がかりに,アイランド公式を中心としたブラックホールの量子論的性質について,ブラックホール熱力学,ホーキング放射から始まる一連の発見から,近年になり明らかになってきた成果までを解説する.

目次

第1章 ブラックホール熱力学
  1.1 ブラックホールとその因果構造
  1.2 ミンコフスキー空間のリンドラー座標
  1.3 いくつかの必要事項
  1.4 ブラックホールの熱力学とベッケンシュタイン-ホーキングエントロピー
  1.5 錐的特異点とブラックホールエントロピー
  1.6 補遺A:境界面の微分幾何的性質まとめ
  1.7 補遺B:重力作用の境界項について
  1.8 補遺C:錐的特異点とそのスカラー曲率

第2章 ブラックホールのホーキング放射
  2.1 直感的な説明
  2.2 クルスカル時間とシュワルツシルド時間
  2.3 リンドラーハミルトニアンとローレンツブースト
  2.4 相対論的場の理論の真空とTFD状態
  2.5 エターナルブラックホールにおける計算
  2.6 重力崩壊で生じるブラックホールのホーキング放射
  2.7 量子相関とエンタングルメントエントロピー
  2.8 エンタングルメントエントロピーとレプリカ法

第3章 共形場理論とエンタングルメントエントロピー
  3.1 共形変換
  3.2 共形アノマリーと中心電荷
  3.3 プライマリー演算子とその相関関数
  3.4 アノマリー有効作用とストレステンソルの変換則
  3.5 いくつかの状態におけるストレステンソルの値
  3.6 トーラス分配関数とモジュラー不変性
  3.7 共形場理論におけるエンタングルメントエントロピー
  3.8 ツイスト演算子の応用例

第4章 量子情報理論から期待されるブラックホール蒸発の描像
  4.1 情報喪失問題
  4.2 より詳しい計算
  4.3 情報はどこへ行くのか?
  4.4 ヘイデン-プレスキルの思考実験

第5章 AdS/CFT対応
  5.1 反ドシッター空間
  5.2 対称性の一致とホログラフィック方向の解釈
  5.3 バルク境界関係式
  5.4 ホログラフィックストレステンソル
  5.5 ヒルベルト空間の対応について
  5.6 CFT有限温度密度行列の重力双対
  5.7 TFD状態の重力双対,およびER=EPR
  5.8 AdS/CFT対応とブラックホールの微視的状態

第6章 ホログラフィックエンタングルメントエントロピー
  6.1 計算の具体例:R1,1上の真空のEEの計算
  6.2 いくつかの漸近的AdS3時空におけるHEE
  6.3 非連結領域についてのHEE
  6.4 HEE公式の証明
  6.5 HEE公式の量子補正
  6.6 エンタングルメントウェッジ再構成

第7章 極限ブラックホールとJT重力
  7.1 極限ブラックホールとAdS2
  7.2 次元簡約とJT重力
  7.3 JT重力の解について
  7.4 JT重力の境界項とホログラフィー
  7.5 JT重力におけるHEE公式
  7.6 点粒子のバックリアクションについて
  7.7 補遺A:JT重力の作用の計量についての変分

第8章 ブラックホール相補性をめぐって
  8.1 そもそも一体何が問題だったのか?
  8.2 ブラックホール相補性
  8.3 ファイアーウォール問題
  8.4 ER=EPRを用いたブラックホール内部の再構成

第9章 ホーキング放射とアイランド公式
  9.1 熱浴の導入
  9.2 熱浴上のエントロピーとHEE公式
  9.3 ホーキング放射のアイランド領域
  9.4 アイランド公式について

第10章 レプリカワームホールと微視的状態のゆらぎ
  10.1 ユークリッド化された配位
  10.2 レニーエントロピーについての重力経路積分
  10.3 エンタングルメントエントロピーへの寄与
  10.4 西海岸模型
  10.5 レプリカワームホールとブラックホールのゆらぎの効果
  10.6 CFTのアンサンブルとワームホール

第11章 二重ホログラフィーとその応用
  11.1 ブレーンの接合条件
  11.2 ポアンカレAdS3におけるブレーンのバックリアクション
  11.3 ブレーンが存在する場合のHEE
  11.4 ブレーンに束縛されたモード
  11.5 デルタ関数型のポテンシャルを持つシュレーディンガー方程式の解
  11.6 3つの等価な描像
  11.7 ブレーン上の有効理論のバルク描像からの導出

第12章 ブレーンワールドブラックホールとアイランド公式
  12.1 事象の地平面の外側のブレーン配位
  12.2 ブレーンワールドブラックホール
  12.3 エターナルBTZ上のブレーン配位
  12.4 ブラックホールがある場合のブレーン描像とCFT描像
  12.5 ホーキング放射のエントロピーのホログラフィックな計算
  12.6 エンタングルメントウェッジとブレーン上のアイランド領域

第13章 量子誤り訂正符号としてのブラックホール内部
  13.1 量子誤り訂正符号とペッツの再構成写像
  13.2 ヘイデン-プレスキルプロトコルと量子誤り訂正
  13.3 吉田-キタエフプロトコル
  13.4 ペッツの再構成写像との等価性

参考文献
索引

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